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『五等分の花嫁』3巻感想

『五等分の花嫁』3巻の感想を。ネタバレです。

五等分の花嫁(3) (講談社コミックス)

前書き

『五等分の花嫁』は週刊少年マガジンで連載中の漫画。ジャンル的にはラブコメです。今なにかと流行りの家庭教師モノ?で、学年成績最優秀の上杉風太郎君が、仕事の依頼として、赤点常連の同級生の五つ子女子の家庭教師をする……だけど苦労ありハプニングありイベントあり色恋あり……というのが大まかな筋。
 ヒロインが五つ子姉妹というのが重要な部分です。姉妹たちは顔立ちはそっくりなのですが、性格はもとより得意分野、趣味嗜好などがまったく異なる個性溢れる姉妹で、各々が物語を華やかに彩る魅力的なヒロインとなっております。
 将来、風太郎は五つ子の誰かと結婚するというのが物語冒頭で明示されていて、五つ子の誰が風太郎の花嫁なのか、というライトなミステリ要素もある作品ですね。

 というわけで3巻。メインイベントは2学期(だよね?)の中間試験ということで、風太郎は中野父に「五つ子全員試験結果で赤点なし。不可だった場合は家庭教師落第」というノルマを課せられることに。
 このエピソードで中核を担ったのは、今までなにかと風太郎と衝突していたニ乃五月のアンチ風太郎姉妹勢。なんだかんだ悲喜交交(風太郎的にはイラつきが一番多かっただろうけど 笑)のやり取りを経て、最後には風太郎も二人と少し距離が縮まって、ノルマもニ乃の機転によってスルーという僥倖な帰着点に。もちろん、一花三玖四葉の友好風太郎姉妹勢とキャッキャウフフイベントもしっかりこなし。次のイベントである林間学校へ、というヒキで3巻は終了。
 主人公と衝突しがちで、読者的には多少モヤモヤする部分もあったかもしれないニ乃と五月に対するイメージ救済の側面があったかな、という印象です。イメージ救済と書くと意地が悪いですね。しっかりとした魅力を引き出した、と言うべき巻ですね。そういう意味では二人は、読者的には好意的な印象が先行していただろう一花三玖四葉と同じラインに立てるようになって、いよいよ五つ子全員の魅力が開花し始めている巻とも言えそうです。

キャラ感想

風太

 いやはや、苦労人の主人公である。単純に、一人で赤点候補の五人全員に勉強を教えるだけでもすげぇ苦労しそうだけれど、相手はなにかと気難しいうら若き乙女である、そもそも勉強以前、五人のメンタルやモチベーションの部分から向き合わざるを得ないのである。それをクリアせねば、勉強を教えることすら、ままならぬ。並大抵の高校生にできることじゃないと自分は思います。ただ、その対価として破格の給料と、美少女5姉妹と毎日公私問わず触れ合える特権があるわけで、自分がこの漫画のモブだったらめっちゃ嫉妬しとるだろうね!

・一花

 風太郎と喧嘩した五月を慮ったり、恋する三玖をフォローしたりと、長女らしい振る舞いを発揮。妹たちに対して細かいことには口を挟まず、だけど見るべきときはしっかり見ているという慈母のごとき優しさには納得の長女感。二乃や五月も同じく姉妹を守ろうという強固な意志が見え隠れしますが、二人はちょっと窮屈なやり方にも感じられるから、二人と一花の立場の違いを、しっかり感じさせてくれているのではないでしょうか。
 ただし一花自体に当然、一人の女子として望みも欲求もあるわけで、長女としての一花と、女子としての一花のギャップが、風太郎との関係を通してこの巻から見え始めています。女子としての一花の、最も近い立場は一花と仲がいい三玖なわけで、一花と三玖の姉妹の相性がいいからこその苦難が、ほんのりと香りますね。

・ニ乃

 理想的なツンデレムーブで、読者的には評価が急上昇ではないでしょうか。たぶん、一切風太郎に教えを請わず(なんてことのないヒントはありましたが)テストに臨んで、一花と総合で8点しか差がないんだから、自頭は(あくまで姉妹基準では 笑)悪くないのでは?と思います。
 風呂で謀って風太郎の課せられたノルマを聞き出したときは若干の苛立ちを覚えましたが、最終的にはその情報を握っているからこそ、父親に啖呵を切って風太郎を救済するのだから、侠気がある娘です。というか、なんだかんだとニ乃は風太郎に甘いよね。生来の気質は面倒見がいいのだと感じさせてくれる次女さんです。

・三玖

 三玖さんの出番は今巻ではちょっと大人し目。というか、この子をこの段階であまり前面にアピールし、中心的に動かしてしまうと、持ちうる恋愛力の高さで他の姉妹より圧倒的アドバンテージを持ってしまう感じがありそうなので、魅力的な反面、ちょっと難しく不憫な立場にいる娘でしょうか。
 ただ、風太郎に自室とベッドを貸し(どうでもいいけど、普通のラブコメ主人公だったら絶対悶々としそうだけど、それについてなにも感じない風太郎の天然っぷりに笑える)、同衾さえするというヒロインムーブを発揮しているので、イベント自体はなにかとおいしい。

四葉

 テスト結果こそ変わらずアカンかったけれど、明るく元気で要所要所で風太郎をアシストする良き娘っぷりは発揮。しかし、ちょくちょくと表には明確に出さない"含み"も感じられる、どこか底が見えない雰囲気を稀に醸し出すキャラだったりします。

 利己的な見返りを求めず、利他的、奉仕的に尽くすその姿勢が、ちょっと怖い部分があるんですね。ただ、そういう部分が多面的でまた推察しがいがあったりもする、四葉の隠れた魅力だったりします。

・五月

 個人的に今巻で一番ヒロインムーブをしていたのは五月さんだと思います。
 風太郎と喧嘩したあと、もう教えを請わないと強く意地を張ったものの、だけど後悔と勉強が進まない焦りで、一人自室で勉強しながら泣いてしまう、というムーブがめっちゃキュンキュン来るでしょ。その後に風太郎と仲直りする流れも、めっちゃ風太郎カッケーし、五月も可愛いでしょ。
 五月は、すごくシンプルな性格なんだと思います。何回も書いているんだけど、すごく頑張り屋さんだけど、同じくらい不器用で要領が悪い。その空回りっぷりで五月はよく失敗するんだけど、頑張っているのは間違いない事実だから、読者としては嫌いになれないし、むしろ応援したくなる。
 異性としてすごく萌えるって感覚は自分にはないけれど、一人のキャラとしては十分魅力的だし、頑張ってほしい、そう思わせてくれる存在ですね。

終わりに

 こういう一人一人について感想を書いていて思うのですが、『五等分の花嫁』って五人のヒロインのうち、特別誰かに出番を割いて、特別誰かに出番を控えさせるってこと避けていて、平等に扱おうとしているのをすごく感じるのですね。もちろん、そのエピソードの核となるキャラはいるだろうし、花嫁が明示されている以上、最終的な役どころとして明確なメインヒロインはいるのでしょう。だけど、一読者である自分としては、それをほとんど意識せず、五人平等に魅力を感じます。すごく気を遣って描かれているのだろうなぁと感じる漫画ですね。

 以上、感想でした。