『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』感想
『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』の感想を。ネタバレです。
あらすじ
藤宮周の住むマンションの隣には、学校で一番の美少女・椎名真昼が住んでいる。特に関わり合いのなかった二人だが、雨の中ずぶ濡れになった彼女に傘を貸したことから、不思議な交流が始まった。
自堕落な一人暮らしを送る周を見かねて、食事をつくり、部屋を掃除し、なにかと世話を焼く真昼。
家族の繋がりに飢え、次第に心を開いて甘えるようになる真昼と、彼女からの好意に自信を持ちきれない周。素直でないながらも二人は少しずつ距離を縮めていく……
「小説家になろう」で絶大な支持を集める、素っ気なくも可愛い隣人との甘く焦れったい恋の物語。公式サイトより引用
感想
・なにより、主人公とヒロインの交流に全力を注いだのが素晴らしいという印象でした。サブキャラは何人か登場するのですが、それもあくまで脇をガヤガヤ盛り上げるだけで、話の本筋は主人公とヒロインのみ。自分はキャラクターが多く、視点があっちこっちと飛ぶ群像劇が苦手なので、こういう対話形式でじっくり描写してくれる小説は大好物な次第です。
・タイトルからだと色々とエキセントリックな内容を想起させられますが、話自体は至ってノーマルな現代恋愛劇です。主役二人の内心や行動原理も、とても現代的かつ常識的。地に足がついた堅実な話で、そういうのが退屈だと思う人にはニーズに合わないでしょうが、逆に落ちついた作品を探している人なら、しっかりニーズに合う作品かと。
・主人公である周の草食っぷりの強調さがずいぶん繰り返されていたな、と読んでいて思いました。そりゃ才色兼備な美人にガッツリ通い妻かまされて、まったく手を出さないんだから根っからの草食なのは間違いないんだけどね。ただ、何度も強調されていたぶん、後半の真昼の無自覚に攻める怒涛のラッシュに陥落しまくりなのは、まるでギャルゲーで主人公に攻略されるヒロインのようであった。
・そしてヒロインの真昼も周と同じく、周の無自覚なラッシュに陥落しまくってる。こいつら、お互いに相手の無自覚な萌えポイントに悶絶してんだから、なんともお似合いのカップルですね。性格的にも、お硬く真面目、だけど内心では寂しがり屋…みたいなところも似ているしね。周の友人に親に、と全方位から攻められている真昼たそですが、逆に言うと周の外堀は埋めつつあるとも言えます。胃袋も掴んでるし、こりゃ勝ちも同然。
・真昼たそは、家族に明らかな闇があるわけですが、個人的にはそこに興味ないと言えば興味ない。ものすごーいベタな話だからね。次巻以降、あんまりそれを中心にガッツリやられると、ちょっと苦手になってしまうかも。まぁ、お話を盛り上げるためには必要なのかもしれないし、自分の予想を裏切って逆にすごい特殊な設定になっているのかもしれないけれど。
終わりに
ニヤニヤできて、サラリと読めて口当たりも良い、とても優れた一冊ではないでしょうか。なろう版がどこまで進んでいるのかはまったく知らないのですが、次巻があるならすぐに手に取ると思いますね。お気に入りのシリーズとなりました。
以上、感想でした。