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『五等分の花嫁』2巻感想

『五等分の花嫁』2巻の感想を。ネタバレです。

五等分の花嫁(2) (週刊少年マガジンコミックス)

前書き

『五等分の花嫁』は週刊少年マガジンで連載中の漫画。ジャンル的にはラブコメです。今なにかと流行りの家庭教師モノ?で、学年成績最優秀の上杉風太郎君が、仕事の依頼として、赤点常連の同級生の五つ子女子の家庭教師をする……だけど苦労ありハプニングありイベントあり色恋あり……というのが大まかな筋。
 ヒロインが五つ子姉妹というのが重要な部分です。姉妹たちは顔立ちはそっくりなのですが、性格はもとより得意分野、趣味嗜好などがまったく異なる個性溢れる姉妹で、各々が物語を華やかに彩る魅力的なヒロインとなっております。
 将来、風太郎は五つ子の誰かと結婚するというのが物語冒頭で明示されていて、五つ子の誰が風太郎の花嫁なのか、というライトなミステリ要素もある作品ですね。

 というわけで2巻。前巻のニ乃とのハプニングの話から、中盤は風太郎は妹のらいはと一緒に五つ子と夏の花火大会へ。後半は秋になって学校生活に戻り、風太郎と五つ子の幼き頃のルーツを匂わせて二巻は終了。
 今巻のメインは花火大会ですね。髪型を変えて華やかな浴衣を来た五つ子や、空に綺麗に咲く打ち上げ花火、途中でバラバラになった五つ子が風太郎の尽力によって五人の結束を再確認する淀みない流れなど、ビジュアルの良さもストーリーの良さも存分に発揮された、魅力的なシリーズだったのではないでしょうか。

キャラ感想

風太

 主人公だから当然だし、仕方がないのですが、常になにかと癖を見せつけてくれる五つ子たちと、平等に対等な関係を重ねねばならぬ、重責よ。花火大会では自覚はなくとも目まぐるしく姉妹間を移動し彼女らのフォローに尽力、運動神経はなくとも随一の行動力を見せつけてくれます。
 しかし五つ子視点だと多かれ少なかれ風太郎に対して異性として意識していると思うのだけれど、風太郎視点では五つ子に対して恋愛的なフラグを立てているつもりはまったくなし。なかなか少年向けラブコメらしい鈍感さだけれど、その反面、五つ子の家族としての結束、五つ子同士がお互いを大切に思いやる気持ちを強く共感し、尊重しているから、嫌味はなし。

・一花

 1巻時点では特別目立つ活躍がなかった一花さんですが、花火大会編では実質メインヒロインとして張ることに。『作り笑いはやめろ』という風太郎の核心をついたヒトコトに、一花さんの乙女心は色々と刺激されたよう。花火大会以後は四葉、三玖に続いて、風太郎に対して素直に協力する(そして恋愛レースにも参戦する)存在となります。
 あと、一花は他の姉妹よりビジュアルが良いということがちょくちょくアピールされていますね。容姿やスタイルは(髪型や服装は違えど)姉妹は一緒なのだから、まとう雰囲気にやっぱり女優オーラがあるのでしょうか。

・ニ乃

 1巻に引き続きツンツンしています。ただ、ちょくちょく風太郎の尽力自体は認めているので、ただ否定一辺倒の狭隘な娘ではありません。2巻でも強調されていますが、あくまでニ乃は、もともとあった五つ子同士の満たされた関係を変える、または壊す存在を許せないだけであって、風太郎個人に対して特別な怒りを覚えているわけではないのでしょう。
 五月が風太郎に話したように、五つ子ひとりひとりが、風太郎によって変わり始めています。だから、ある意味ではこの先ニ乃が戦うべき相手は、風太郎ではなく、自分が大切に思う他の姉妹であり、なにより自分自身であるのかもしれません。

・三玖

 ヒロインムーブしすぎぃ!風太郎と最初にフラグを立てたアドバンテージは伊達ではなく、花火大会編では特に、要所要所でモテない男読者のハートを掴む胸キュンムーブをします。なんというか、「鈍感な風太郎は気付かないんだけど、読者にはダイレクトに伝わる恋する乙女としてのササイなアピール」が切なく、微妙に薄幸で報われきれてない感じがまた、三玖の魅力を引き出しているのだと思います。

四葉

 花火大会編では目立つ活躍こそなけれど、最後の線香花火の段取り用意するというグッジョブ!な頼れる娘。四葉、頭脳労働こそ姉妹の中で一番ニガテと描写されども、要領自体は良いタイプなんだと思います。まぁ、運動系だし、そういう営業マンなうまさはあるのかも。
 最初からとても明るく素直なキャラなので、癖がないぶん話の中核として描写されることはないのだけど、そこが逆に、四葉の特異さを表しているなぁとこの時点でも思ったり。

・五月

 よく風太郎とツーショットになるし、一人だけ、らいはとの付き合いや風太郎の家を知っているという特別なポイントがあるのですが、話の核心に進むと、いつの間にかフェードアウトしている印象を覚える娘。真面目だし頑張り屋だけど、ポンコツな部分がけっこうあるところもアピールされ始めていますね。
 なんというか、五月はヒロインの一人!というより、愛玩キャラというか、異性として感じない、これまた特異な印象を持つキャラなんですね。しかし、全体の扱いとしては、作品を代表するヒロインとして選ばれている節もあり(1巻の表紙の中心は五月だし、『五等分の花嫁』の端緒も五月ですよね)なんとまぁ、不思議な存在です。

終わりに

 個人的に今巻の一番の見所は、ヒロイン一人ひとりの所作というより、『喜びも 悲しみも 怒りも 慈しみも 私たち全員で 五等分ですから』という五つ子の見開きのページと五月のセリフです。
 この作品を象徴する一文であって、五つ子の絆を表す一文でもあります。この言葉を大切に遵守する意味、あるいはこの言葉を裏切ってしまう意味を、五つ子と風太郎はこれから先に苦悩、または成長とともに知っていくだろうことを予感させてくれる、印象的な絵と言葉ですね。

 以上、感想でした。