『五等分の花嫁』9巻感想
『五等分の花嫁』9巻の感想を。ネタバレです。
前書き
『五等分の花嫁』は週刊少年マガジンで連載中の漫画。ジャンル的にはラブコメです。今なにかと流行りの家庭教師モノ?で、学年成績最優秀の上杉風太郎君が、仕事の依頼として、赤点常連の同級生の五つ子女子の家庭教師をする……だけど苦労ありハプニングありイベントあり色恋あり……というのが大まかな筋。
ヒロインが五つ子姉妹というのが重要な部分です。姉妹たちは顔立ちはそっくりなのですが、性格はもとより得意分野、趣味嗜好などがまったく異なる個性溢れる姉妹で、各々が物語を華やかに彩る魅力的なヒロインとなっております。
将来、風太郎は五つ子の誰かと結婚するというのが物語冒頭で明示されていて、五つ子の誰が風太郎の花嫁なのか、というライトなミステリ要素もある作品ですね。
というわけで9巻。色々と恋愛面で波乱が巻き起こった春休みの旅行編が終わり、風太郎と五つ子は無事進級して高校3年生へ。
幸か不幸か五つ子と風太郎は同じクラスになるわけですが、そこで同じクラスに武田くんという成績学年首位を巡る風太郎のライバル?が登場、更に中野父の再びの介入も発生し、またもや、風太郎は家庭教師を続けられるかどうかの試練が。
そんな男の争いと並行して、誕生日を迎える風太郎へのプレゼントで、五つ子(というか姉三人)の恋愛レースも激化。ついに本気になって攻め始めた一花、あくまでストレートに迫り続ける二乃、振り向いてくれるよう一人努力を重ねる三玖と、三者三様のアプローチ。恋愛色のない四葉と五月はいつもどおり無関係と思いきや、どうやら二人にも、風太郎に対して言えない含みがあるようで。
男女それぞれ、キャラそれぞれ、譲れないものを巡る闘いを描いた、一巻でございました。
キャラ感想
・風太郎
相変わらず背負うものが多い、苦労人の主人公だなぁと思う。
初読のときは武田くんは恋愛面でのライバルにもなったりするのか、そうだとちょっとヤダなーとちょびっと思ったけれど、彼はまったく五つ子に興味はなく、むしろ風太郎にだけ強く執着するという、読者的に良心的で薔薇的なキャラ設定でした。いや、そういうの抜きにして、普通に友人としていいキャラだと思います。風太郎同性の友達いないし、仲良くなってほしいよね。
単に五つ子の成績を上げて卒業させるだけでなく、その先の彼女たちの進む道をも担ってみせると言い切ったシーンは、カッコいいですね。もはや明白なことかもしれませんが、今の風太郎は彼女たちに恋愛感情こそないけれど、その他の感情はストップ高で五人に抱いているよね。そりゃあみんな惚れちゃうわな。
・一花
この巻の一花さんムーブは非常に賛否両論というか、まぁネットで軽く見る限りでは否のほうがずっと多いようです。なんと言ってもあの三玖さんを利用してしまったからね。ただ、一花は最初期から長女としてのあり方と、一人の女子としてのあり方でずっと悩んでいたのは間違いなく、その軛から解き放たれた一花さんの、本音の肉食女子っぷりをアピールするなら、これ以上にない効果的で破壊的なムーブでした。
五人の仲立ちを一番励んでいた一花が、逆に今度は五人の関係を壊す要因になり得るというのは、なかなかに皮肉が効いて面白きことであります。
・二乃
解き放たれた一花さんの肉食っぷりにも一歩も引かず対抗しているのは、流石ツンデレを極めた二乃さんと言ったところ。ただ、二乃の良きところは肉食でありながら、恥じらいや不安、焦りなどもちょくちょく見せてくれる部分です。
決して攻めるだけのストロングスタイル一辺倒ではない、あくまでウブな乙女でもあることも魅せてくれる点が萌えますね。
・三玖
上二人が身を切って猛禽類のごとく攻め続ける中で、風太郎ガチ恋勢最古参の三玖さんは、奥ゆかしく相手から自分の魅力に気付いてもらいたいと、自分を高めることを選びます。なにを悠長な、と思う部分もありますが、長期的に見たらそれもまた強力な選択肢なのかもしれません。
上二人のやり方は今のレベルで勝てるボスなら有効な手段ですが、レベル差があったら太刀打ちできませんからね。そうであるなら、しっかりレベルアップして挑もうという三玖のスタンスのほうが、正解かも。風太郎はそんな簡単に倒せるボスでは絶対ないし。
・四葉
今巻の四葉の底が見えない感は異常。
友情か恋心か、はたまた別のなにかか、いずれにしても四葉が風太郎に目に見えない感情を抱いているのは間違いなく、されどそれを四葉自身の口からは決して明確な言葉にはさせない、ヤキモキさせるもどかしさよ。
まぁ、ここまでの描写を見れば、四葉自身に何らかの重大な秘密が隠されているのは明白で、それが語られることによって『五等分の花嫁』はいよいよ最終ステージに向かうのかもしれません。
・五月
なんだか姉妹他四人がシリアスな状態になってきているなか、どこ吹く風と自由に動き回る五月さんは、徐々に愛玩キャラというか、清涼剤のような感じになってきている印象も(笑)
五月にも秘密があることが示されていますが、どこか四葉ほどに深刻さを醸し出さないのが良いね。みんながみんな抱えるものがあると、読んでいてシンドいからね。今巻はけっこうギスギスしてる部分があるのも否めないので、五月の存在は読んでいて救われました。
終わりに
『五等分の花嫁』のゴール地点がどこかはまだ明示されてないのですが、高校卒業で終了と考えると、作中の時系列では残り一年なんですね。キャラクターの背景もだいぶ語られてきた印象で、ここから10巻20巻と冗長に巻数重ねることは絶対ないはずで、残りは物語の完結へと畳んでいくことが話のメインになるかなと思います。とても楽しめている作品なので、完結まで、しっかり追いたいですね。
以上、感想でした。