はぐれ中継基地Ver2.0

小説・漫画・映画・ゲーム /  感想

『五等分の花嫁』5巻感想

『五等分の花嫁』5巻の感想を。ネタバレです。

五等分の花嫁(5) (講談社コミックス)

 前書き

『五等分の花嫁』は週刊少年マガジンで連載中の漫画。ジャンル的にはラブコメです。今なにかと流行りの家庭教師モノ?で、学年成績最優秀の上杉風太郎君が、仕事の依頼として、赤点常連の同級生の五つ子女子の家庭教師をする……だけど苦労ありハプニングありイベントあり色恋あり……というのが大まかな筋。
 
 ヒロインが五つ子姉妹というのが重要な部分です。姉妹たちは顔立ちはそっくりなのですが、性格はもとより得意分野、趣味嗜好などがまったく異なる個性溢れる姉妹で、各々が物語を華やかに彩る魅力的なヒロインとなっております。
 将来、風太郎は五つ子の誰かと結婚するというのが物語冒頭で明示されていて、五つ子の誰が風太郎の花嫁なのか、というライトなミステリ要素もある作品ですね。

 というわけで5巻。大きなイベントがあるわけではないですが、今まで匂わされていた風太郎と五つ子の過去や、初めて焦点が当てられた四葉の物語、そしてのちのち考えると、『五等分の花嫁』という作品の大きな転機となった長編「7つのさよなら」編が開始、というところで終わり。
 個人的に四葉にスポットが当てられる「勤労感謝ツアー」前編後編が一番面白かったです。出会った当初から風太郎に友好的で、要所要所でアシストしてくれて、誰に対しても献身的で。だけどその内心が明かされなかった四葉の、断片的とはいえその気持ちが明かされた話には、グッと来るものがありました。まあ、それに関してはキャラ感想で書いたほうが良いですね。

キャラ感想

風太

 風太郎の過去が少しだけ明かされました。髪を染めてヤンチャだった小学生の風太郎少年、修学旅行で同級生に色々とオラつくも、潜在的にそういう自分は除け者で必要とされない人間だと自覚していました。独り腐っていたところで、助けてくれた不思議な少女。そこから先、少年と少女になにがあったのかはまだ不明ですが、その少女との出会いが契機となって今の勉強第一風太郎ができあがったということが分かりました。
 
 まぁ物語として考えれば、その少女が五つ子の誰かなのは間違いないわけですが、現段階ではそれが誰かがさっぱり分からず。ただ、そうなると五つ子の誰かが普段風太郎を欺くほどに偽って接しているということであり、おバカキャラで色々とフワフワしてる五つ子にも隠れた顔があるということですね。なんだかミステリ小説の犯人探しの如くですが、『五等分の花嫁』のこういう部分がちょっとワクワクしたりもします。

・一花

 三玖とセットになるシーンが多し。前巻から自覚した風太郎への恋心、されど三玖の存在が楔となって、それを表に出すことができず。前巻で『平等ではなく公平に』という風太郎の言葉で三玖の恋心は解き放たれたわけですが、今度は一花が三玖のその苦しみを味わうことに。後になって自覚した恋心、姉としての立場、その中でも特に仲のいい妹、と色々なシガラミに囚われた長女の心が、解き放たれるのはいつになるのか。

・二乃

 「7つのさよなら」編でまたしても読者的なヘイトを一身に受ける役割に。ただ、この段階の二乃は、前と違い、風太郎への信頼と不信の間で揺らいでいると思うのです。それに、自分以外の姉妹が全員風太郎へ明白な信頼を持っていて、自分だけが取り残されている不安と孤独感。そして、姉妹の中で特別仲が良かった五月からの直接否定。そういう色んな要素が集まって、爆発してしまったのではないかと。
 
 どこかの巻の感想で、風太郎によって変わり始めた五つ子たち、その中でいつか二乃は姉妹や自分自身と戦わなければいけないときが来ると、書いた気がするのですが、この長編の部分的なテーマがそれに当たるのかな、と思います。

・三玖

 一花とセットになるシーンが多し。前巻で解き放たれた三玖の恋心、それが今巻ではっきりと現れていました。自分の恋心に迷いがなくなり、いつになく風太郎にグイグイと迫る三玖さんはいつにもまして魅力的ですが、一花に明確な恋愛感情が見え始めているから、読者的に、最初期からあった三玖さんのアドバンテージも揺らき始めているという実感も。

 恋愛的な意味では決して圧倒的優勢ではなく、これからの苦難も予想される、そんな厳しい印象も持ちます。

四葉

 常に利他的で献身的な四葉の「おかしさ」というか、違和感が前後篇ではっきり伝えられましたね。ただ、それに対しての四葉の内心がはっきり明かされたわけではなく、未だ具体的に他人への献身の先になにを求めているか、というのは四葉自身の言葉では伝えられず。しかし、四葉の公園での最後の表情を見れば、その一端が掴めます。

 すなわち、それは他人の笑顔であり、より四葉個人へフォーカスすれば、風太郎という人間の笑顔なのだろうと思います。ほんとう、優しい子よね。

・五月

 前はニ乃とともにアンチ風太郎を表明していましたが、多くのイベントを経て、今は信頼する立場に。五月の成長(と風太郎の成長)を実感しますが、それがニ乃を追い詰めてしまう要因に。なんだか毎度書いていますが、五月は真面目で誠実な反面、しばしば不器用な手段を用いてしまうから、今回もそれがニ乃と五月の不和の原因の一つになってしまったのでしょう。
 
 だけど、今回の一件は風太郎と五つ子、六人の間で必ず迎えねばならない大事な衝突、という印象が自分にあって、誰が間違って誰が正しいという話でもなく、各々が自省し、納得しなければ先に進めない問題のような気がします。言うなれば通過儀礼であり、関係の精算でもあります。そういう意味では、五月の怒りはとても大事な問題解決の、契機となったのではないでしょうか。

終わりに

 既刊半分まで来ましたね。話の流れもだいぶ熟れてきた感覚で、今まで以上にスルスルと読むことができます。五等分の花嫁は特別感想が書きやすいところがあって、話の流れが淀みないんですよね。それに、登場人物も五つ子と風太郎、という六人に完全に絞っているから、深い心理描写の興味とか、登場人物への愛着とかが、すごく持ちやすい。そういう意味では、やはり自分好みの作品なのだろうと思います。

 以上、感想でした。