はぐれ中継基地Ver2.0

小説・漫画・映画・ゲーム /  感想

『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』15巻感想

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』15巻の感想を。ネタバレです。

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~(15) (ヤングジャンプコミックス)

前書き

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』は週刊ヤングジャンプで連載中の漫画。ジャンル的にはラブコメ?です。
 男女の主役二人とも天才で、お互いがお互いを惚れさせようとしているという前提。お互いの人間心理を高度に読みあったり、なんてことのない学校のイベントを肴に鋭い駆け引きをしたり、というお話。こう書くとなんだかちょっと堅苦しいような感じもしますが、全然そんなことなく、むしろお互い好きあってるのに素直になれず、明後日の方向に突拍子もない行動をしまくる主役二人の天然ぷり+可愛らしさにニヤニヤする、そんなゆるーいコメディです。
 というわけで15巻。前巻の奉心祭のクライマックスでかぐやと御行はお互いの恋心を分かち合い、最後には早坂さんもドン引きの大人のキッスまでかましました。1巻からながーくながーく続いてきた恋愛頭脳戦も、とりえずは一段落ということで。ただ余熱は冷め止まず、キッスからの現実逃避を図ったかぐや(通常)の中から脳内裁判を経てついに表に出てきたかぐや(氷)が御行と対峙へ、というところで終わってましたね。
 今巻はまるまる、かぐや(氷)を中心としたお話。かぐや(氷)は過去のあり方というかスタンスなので、ついに今まで明確に語られなかったかぐやの過去の補完が。そして、同時にかぐや(氷)と対峙する御行も、過去から今に至るまでの自分のやり方というかポリシーの再考を迫られ、幾度も難しい決断に迫られることに。まぁ、主役二人とも色々と難儀な性格をしてるので(笑)、そうそう素直に恋人に!とはいかんよな。それが面倒くさかったり可愛らしかったりする、なんとまぁ二人らしいお話ではあります。

すべてを晒すということ

 容姿端麗な才女であるかぐやも、あるいは最優秀成績を残す生徒会長としての御行も、それらは決して二人本来の姿ではありませんでした。今まで『かぐや様は告らせたい』でそれはさんざん読者には明示されていますが、実際の二人はけっこうアホでぽんこつなんですね(笑)
 でも、それをお互いに晒すことを二人は極度に恐れていた。かぐやは早坂さんに手伝ってもらってしょっちゅう偽装工作をしますし、会長は藤原書紀にコーチしてもらってひっそりと頑張ってます(おかげで藤原書紀は変な性癖に目覚めつつありますが)。
 なぜか。相手が好きだから。相手を失いたくないから。相手には自分の良いところだけを見て欲しかったから。自分の弱く汚い部分を晒して、幻滅されるのが恐ろしかったから。
 だから、かぐやは怯えながら告白できずに、相手からの告白をずっと待ちました。御行は言い訳めいたプライドで自分を守り、理想的な自分で告白を行いました。そして、奉心祭で二人は結ばれ、とりあえずのハッピーエンドを迎えた。
 されど「恋仲のその先」があるのなら、すべてを相手に晒さなければ、遠からず破綻は見えてしまう。なぜなら、恋とは、愛とは、理想だけで育まれるものではないからです。むしろ、その逆……相手の弱さ、醜さ、脆さに直面したときにこそ、その感情の真価が問われる。
 と、長々と書いてきましたが、今巻はそういうことについて、ずっと伝えていた巻なんだと思います。

 そもそものぽんこつ云々以前の二人のルーツ、冷めた氷のかぐやも、病的にプライドに囚われる御行も、いくら隠そうと一人の人間を構成する一部分に過ぎない。それを無理矢理にでも隠そうとするから歪んで人格交代みたいなことが起きるし、ぶっ倒れたりする。
 だけど、お互いがお互いを知りたいのは、そこなんです。どんなことがあろうと、相手が綺麗で優しい人なのは百も承知なんです。そんなのは骨の髄まで身に沁みている。なにを知っても、今更その理解が裏切られるなんて一欠片も思ってないくらい。だから、知りたいのは、弱い部分。隠そうとしている部分。それを知ることで、ついに恋する相手の本来の姿と心に触れることができるから。
 ということで、最後に二人はそれを伝えることができて、次のステージへ、というところで終わり。なんだか展開をなぞっただけのダメダメ感想ですが、まとめると、今巻は前巻の空白や問題点を埋める補完的な意味合いがある一冊ということだと思います。

終わりに

 二人の仲は一段上り、ほぼ恋人関係ということになりました。次はどういう展開にするのでしょうか。恋人関係だけど慣れないから(特にかぐや)色々誤解+ハプニング!的な感じになるのかな。ゲスな勘ぐりだけど、仲が進めば、やったやらない、みたいなのになるかも…うーん、いくら青年誌連載とはいえ、この作品で見たいとはあんま思わないかも。もしそういう展開になっても、柏木さんのようにサラッと流して欲しいですね。まぁ、ひどくつまらんゲスな邪推ですね。次巻の展開が今から気になるところであります。

 以上、感想でした。