はぐれ中継基地Ver2.0

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『点』感想

 ショートフィルム『点』DTVで視聴したので感想を。三十分程度の作品で、ネタバレされて困る映画でもないだろうけれど、一応ネタバレです。

 

ワンルーム

※「点」のフィルムのAmazonリンクがないので、元ネタとなったyonigeの「ワンルーム」を貼っておきます。

 前書き

 『点』は山田孝之氏主演のショートフィルム。映像のみの純粋な企画というわけではなく、「yonige」という女性二人組ロックバンドのメジャーデビューに伴って、「yonige」の一曲を、山田孝之氏と映画監督の石川慶氏がその世界観を映像化した、というコンセプトで作られた作品のようです。
 自分は恥ずかしながら「yonige」も石川慶氏の作品も全く知らない無知蒙昧極まりない視聴者でして、単純にさらっと見ることができそうな映像作品を探してまして、三十分で終わるという短さと、山田孝之氏が俳優として好みなので、偶然『点』を視聴した、という感じです。
 では前置きはこのくらいにして、内容の感想を。

 淡々

 キャラクタの背景を詳しく描いたり、フィクション的なくどいやりとりとは程遠く、終始淡々とした、田舎町の素朴な雰囲気の描写が続きます。大きな何かが始まるような予感もなく、劇的な転換を見せるというわけでもなく、なんとなく物語は始まり、なんとなく物語は終わる、そんな静かで穏やかなストーリー。

 二人

 友人の結婚式に伴って高校卒業以来帰郷した「ともえ」(中村ゆり)と、田舎町で父親の床屋を継いだ理容師「高志」(山田孝之)の、久しぶりの邂逅を描いた作品です。
 十数年ぶりに出会う二人なのですが、微妙に気まずく、微妙に懐かしく、微妙に楽しく、微妙に覚束ない、そんなひしひしとリアリティを感じる触れ合いを見せます。高校時代の恋人関係から時間が経ち、相応に歳を重ねて、相応に気軽に見せることができない「抱えるもの」ができて、そんな二人は微妙にそれを感じ取りながらも、配慮と優しさで言葉を交わしていきます。
 本当によくあるような日常のワンシーンを描いた作品です。ただ、決して終わりは「悪い」ことを予感させるものではなく、二人とも久しぶりに会えた昔の恋人との触れ合いで、ささくれだった心がほっと落ち着いたような、「良き」結末を迎えます。素朴で、淡々として、でも前向きになれる、そんな冬に飲むホットココアのような、心の芯が温まる物語です。

 キャスティング

 「ともえ」は結婚式で振袖を着るということでうなじの産毛を処理してもらう、という理由で理容室を訪れたのですが、その都合上うなじのアップがけっこうあって、普通にドキドキしました。中村ゆり氏がすごく美人なので、こんな美人なら高校時代とかモテまくっただろうし、田舎町の理容室でこんな美人さんが訪れたらおじいちゃんとかめっちゃびっくりするだろうなぁと思ったりします。
 山田孝之氏は流石の演技力。ちょっと喋りが不得意なタイプで、言葉の端々がしょっちゅう途切れるのですが、そういう演技もまったく違和感なく、ああこういう人って普通にいそうだなぁ…とリアリティを感じさせます。というか、自分もガッツリそういうタイプなんで(笑)、親近感を覚えました。それに、幼馴染がこんな美人な大人になってたら、そらそうなるよ。

 終わりに

 冒頭に書いた通り、サラッと見るに適した作品でした。大きな動きがあるとか、派手な絵が見れるとか、そういうタイプの作品ではないので、人によっては退屈かもしれません。でも、ちょっと行間を読ませる文学性があるというか、短編小説にしても面白い作品になりそうだなぁと思いました。自分のニーズにはしっかり応えてくれた作品なので、十分オススメできる一作品です。元となった「yonige」にもいずれ触れてみたいですね。

 以上、感想でした。