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『機動戦士ガンダム THE ORIGIN II 哀しみのアルテイシア』感想

機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅱ 哀しみのアルテイシア』感想。ネタバレです。

 

機動戦士ガンダム THE ORIGIN シャア・セイラ編 II 哀しみのアルテイシア

前書き

機動戦士ガンダム THE ORIGIN』は機動戦士ガンダムの漫画版、『THE ORIGIN』の9〜12巻の内容を原作としたアニメ作品です。今作は全6章構成の2章目ですね。ややこしい話ですが、アニメを原作とした漫画版を原作としたアニメ版です。要するに再構成(リメイク)みたいなものだと解釈していいかと。ちなみに原作漫画の9〜12巻は未読。ORIGIN自体はちょろっと読んだことがあります。
『哀しみのアルテイシア』は『青い瞳のキャスバル』から数年進んだ話で、キャスバルアルテイシアも成長して、ガンダム本編の面影がかなり強くなっています。二人はザビ家が支配するようになったムンゾより亡命し、多くの後援者のもとに身をやつしながら、幽閉された母の訃報を聞きます。それによって何らかの覚悟を持ったキャスバルは最終的に独り士官を志し、置いていかれたアルテイシアは家族すべてを失う悲劇に見舞われる、という流れ。
 作画は『青い瞳のキャスバル』と同じく非常に安定していて、安彦氏の繊細なキャラデザやタッチを再現しています。キャスバルの声が幼少ということで前話は田中真弓氏だったのですが、今話からガンダム本編と同じく池田秀一氏となりました。最初聞いたときは違和感があったけど(キャスバル自体が流石に若すぎるから)、すぐに慣れましたね。まぁ、シャアと言えば池田氏なので、当然と言えば当然なのですが。
 サービスとして、幼いミライやアムロもちょっとだけ登場。のちのホワイトベース組はなんだかんだと近い世界にいますね。どこかの感想で読んだのだけど、ホワイトベース組ってロイヤル層が多いからね。

感想

 モビルスーツの萌芽

 ガンダムといえばもちろんモビルスーツ。のちにMSの存在により連邦を圧倒したジオンですが、その萌芽が今作で描かれています。ずんぐりむっくりした機体で、モビルスーツとはまだ呼ばれず、モビルワーカーと呼ばれています。ただ、四肢はしっかりありますし、マニュピレータやシールドなどのMSの利点である繊細でフレキシブルな装備も為されているので、テストで連邦のガンタンクを圧倒していました。ドズルが指揮をとっており、ランバラルやのちの黒い三連星のメンバーなどをテストパイロットとして勧誘し、着々と来たる開戦への決戦兵器の完成を近づけています。
 サビ家が父の仇であるはずのランバラルが、どうやってザビ家の麾下に入るのだろうと思っていたのですが、MSパイロットとしてドズルに勧誘されたから、なんですね。のちにエースとなることを考えれば、テストパイロットというだけでも、十分に血が騒いだのでしょうか。それに、ドズルはギレンやキシリアと違って打算で動く人ではないですから、武人として信用に足るでしょうし。

 キャスバルから芽生えたもの

 今作はいかにキャスバルがシャアアズナブルとして復讐者へと至るのか、という部分がクローズアップされています。最初の後援者となったジンバラルの殺害(はぶっちゃけ大した影響はないでしょうが)、親代わりとして匿ってくれたテアボロ家への襲撃や、幽閉し結果的に母を死へと追いやることになったことなど、多くの要因がキャスバルを復讐者へと導きます。特に母の死は取り乱すほどの大きな要因となり、それ以降に明らかにキャスバルは仄暗い感情を顔に浮かべるようになります。
 個人的に興味深いのは、キャスバルの内心をほとんど分かりやすい形で描かないこと、ですね。普通に描写しようと思うと、どうしてもモノローグや独白で感情を視聴者に分かりやすいように伝えたくなりますが、『THE ORIGIN』は一貫してそれらを排して、キャスバルの表情、あるいは行動だけで、キャスバルの感情を伝えようとしてくる。もどかしい部分はあるのですが、視聴者を作中の登場人物と同じステージに立たせることになり、より臨場感、没入感が生まれてくる感覚があります。

まとめ

 キャスバルと同じ顔を持つシャアと出会い、いよいよ長きに渡って宇宙世紀に名を刻む「シャア・アズナブル」という存在が生まれようとしています。Ⅰ、Ⅱともにあくまで「キャスバル」の物語だったので、ここから話が動き出すのでしょう。次話が楽しみですね。

 以上、感想でした。